3/4『現代こけし 人と作品』、共栄書房

この本、ヤフオクで見かけて即欲しい!と思ったのだが、ちょっと高過ぎて手が出せなんだ。
で、なんやかんや、県内の図書館に蔵書されてるとのことで、取り寄せて貰った。
……取寄に約10日ですか、そうですか。

この本の編著者は山中登(やまなか・のぼり)、狩野敏也(かのう・としや)の御二方である。
狩野敏也氏は検索かけると詩人・作曲家としての紹介に行き着くが、山中登氏は出てこない、かも。
なので、奥付に記載された略歴を――更に略して記載しておく。だって、長文打つのメンドry。

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山中登(やまなか・のぼり)←"り"が正しい
1896年生まれ。
画家を経て、民芸品の研究や保存育成に努力する。
この本が発行された1973年時点では、全国こけし連盟理事長さんだったそうな。
主著に「民芸の旅」、「近代こけし」、「こけし――伝統と創作」、「河童昇天」等。

うん、こけし本に相応しい御人である。

狩野敏也(かのう・としや)
詩作・作詞のかたわら、玩具・工芸の研究に励む。

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さてはて、編著者の略歴を書いてたら、山中氏の主著に『近代こけし』ってのが目に飛び込んできたよ。
「近代こけし」とは何ぞや? 知らんがな。
興味が及べば、いずれ調べる、かもね。
ただ「現代こけし」については、年表が本文中に記載されてますので、それを記そう

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1948年 ダンゴコゲス誕生。宮城県遠刈田温泉の小室万四郎夫妻売り歩く。
1949年 小田原市に吊りもの生まれる。縁起物の一種で
      女人や子供の腰に吊る。ひょうたん、福の神など。
1950年 小田原にセットもの誕生。七福、弥次喜多道中もの、狸、カッパ。
1952年 首振り事件起きる。山形県米沢市こけし業者が、
      こけしの首振り特許を出願、許可が出て業界騒然となり取り消し。
1953年 東京上野松坂屋で、全国風変わりこけしコンクール展開催。
      各地でこけしの頒布会はじまる。
1955年 手足のついたこけしがでる。
1956年 こけし頒布会最高に達す。全国会員数約200万。
1960年 小田原に魚屋さん、てんてん手まりなど童謡こけしがでる。
1966年 中小企業庁では、民芸品の輸出振興の計画にこけしを取り上げ、
      日本こけし米国巡回展の開催を決定。
      中小企業庁内に日本こけし振興協議会設立。
1967年 東京京王百貨店にて、近代こけし祭開催。
      セットものこけしの売れ行き緩慢になる。
1968年 こけし海を渡る。ニューヨーク市スタンブラザース百貨店にて
      日本こけし米国巡回展の作品を公開。
      日本こけし振興協議会解散
      NHKでは、日本の民芸を西欧32カ国に紹介するため、
      こけしを取り上げ、鳴子、仙台でロケを行なった。
1969年 NHK.TVのこけし映画完成する。

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ゴメン、年表を引用してるブログ様から丸コピしました。
だって、打つの面倒なんだもの〜。

しかし、略年表は1948年から始まっているが、ここら編は保留しておくべきだろう。
戦前から何らかの変化が起こっていたかもしれず、そこら辺は民芸品史の専門家にでも紡いで頂きたい微妙な色合いの歴史ではないだろーか。

確実に言えるのは、1952年に「首振りこけし特許出願事件」が起きたという一文から微かに伝わる商業化・製品化という現代的発想の匂いが存在してること、そして1954年に「末広こけし」が内閣総理大臣賞を取ったことで文化としての箔が付いたってことだ。
こけしって、自分の親くらいの世代だと案外持ってる印象があるわけだが、市場規模はどのくらいだったのだろうか? ある程度の市場規模があれば、そこに新機軸が投入されれば、そりゃ大きい意味を持つわな。

ちなみに、現在の内閣総理大臣賞を構成する一つに「全日本こけしコンクール」という名前があるけど、これは1959年開始だそうだから、1954年の受賞は多分、文部大臣賞ではなかろうか?
うーん、54年に受賞して、5年後に「こけしコンクール」ですか。 政府に太いパイプを持ってたのか、あるいは政府にコケシスキーでも居たのか?w
(参考→http://ja.wikipedia.org/wiki/内閣総理大臣賞)

そうそう、受賞した「末広こけし」と思わしき画像はWEB上で見つかるのだよ。
http://www.navida.ne.jp/snavi/4807_1.html


なお、この本は「現代こけし史」が目的じゃなくて、作家紹介がメインなんですよ。とりあえず、羅列しておくか。

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相田晴峰、葵千賀子、石原日出男、大関青園、加藤竜雄、岸さだお、栗林一雪
関口三作、宮島無筆、村上けん一、山中三平、渡辺正雄、渡辺雄二

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自分は、この中では山中三平氏に惹かれるかなぁ。
つか、この人をヤフオクのアラートに登録してあったから↑の本が引っかかったのですし。
氏はWEBサイトも持ってるし、また市場の流通量も多い人気作家様だ。
金と置き場所さえ工面できれば、幾つか手元に置きたいものである。

岸さだお氏はググっても全くヒットしないのであった。
本の記載が誤ってるのか、でなければ以下自粛。
いや、さだお氏に限らず、ロクに画像すら出てこない人の多いこと、多いこと。
WEBでも簡単に見つかる有名どころは、山中三平氏渡辺正雄氏、関口三作氏くらいなもんかな?(順不同)


最後に「現代こけし」という概念について、的確に表現してある一文があるので、引用しておきたい。だって自分で書くより上手に纏めてるんだもん。

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現代こけしの諸作品は、制作上の制約がほとんどない、他の人形作家や、彫刻家たちなどから、あるいはその造形上の甘さが指摘されるかもしれない。
しかし、こけしの場合、ロクロによる造型という制約は、たとえば、短歌や俳句などの短詩型文学における定型と同様の性質のものであり、これなくしては、"こけし"でなくなるといった態のものであるだろう。
問題は、制約を制約とせず、これを利点として駆使できるか否かに作者たちの力量が問われるのである。
現代こけしの作家は、伝統こけしのパターンを、造型、描彩の両面で脱却しつつも、なお定型と格闘しなければならない宿命にあるといえよう。

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