東洋文庫『催馬楽』より

末尾の番号は書籍内の掲載順を示す。


●我門・12
わがかどに わがかどに うはものすそぬれ したものすそぬれ
あさなつみ ゆふなつみ あさなつみ
あさなつみ ゆふなつみ わがなを しらまくほしからば
みそのふの みそのふの みそのふの
みそのふの あやめのこほりの 大領の まなむすめといへ
おとむすめといへ


●何為・22
いかにせむ せむや をしのかもとりや
いでてゆかば おやはありくとさいなべど
よづまはさだめつや さきむだちや


●鶏鳴・23
とりはなきぬ てふかさ さくらまろが しがものをおしはし
きたりゐてすれ ながこなすまで


●陰名・25
くぼのなをば なにとかいふ
つらたり けふくなう たもろ


●安名尊・26
あなたふと けふのたふとさや いにしへも ハレ
いにしへも かくやありけむや けふのたふとさ
アハレ そこよしや けふのたふとさ


●山背・27
ましろの こまのわたりの うりつくり ナヨヤ
らいしなや さいしなや うりつくり うりつくり ハレ
うりつくり われをほしといふ いかにせむ ナヨヤ
らいしなや さいしなや いかにせむ いかにせむ ハレ
いかにせむ なりやしなまし うりたづまでにや
らいしなや さいしなや うりたづま うりだづまでに


●妹与我・43
いもとあれと いるさのやまの やまあらゝぎ
てなとりふれそや かほまさるがにや とくまさるがにや


●大宮・48
おほみやの にしのこむぢに あやめこむだり
さやめこむだり タラリヤリンたな


●無力蝦・55
ちからなきかへる
ほねなきみみず

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※さきむだちや
 これは半ば囃子詞であるけれど、全く意味を持たないわけではないらしい。文頭の「さ」については、初/早とする解釈(早乙女に同じ)と、呼びかけの感嘆詞「さあ」に同じとする意見が見られる。
「きむだち」は「君達」であるけれど現代と全く同じであるかはちと分からない。本では「若君様よ/サアお兄さん」くらいに訳すべきかもしれんが語呂が悪いので原文の侭とする とのこと。

※てふかさ
 恨めしさの詠嘆であるかもしれないが意味は確定できないとのこと。