装丁絵師・初山滋

 昭和初期の書籍を眺めていたら、モノクロで比較的単純な線と面で構成されているにも関わらず目を惹くホオズキの挿絵を見つける。絵を手がけた人物は「初山滋」とある。有名人であるから画像検索にも出てくるのだが、軽く書籍検索をかけると最寄の図書館に別冊太陽の特集号が置かれているので借りてみた。
 気になった作品は以下の通り。


《おやゆび姫》…亀裂状の複雑な線効果は私好みである。
《原題不明》(鯉幟の絵)…鱗模様を塗り分けたカラフルな鯉幟だ。
《青いたまごから》…蛙を卵や石コロみたいな形状として捉える発想もあるのだな。
《しょうがくしんこくご 一ねん上》…小鳥の羽部分を草模様みたいなフワリとした塗りで表してある。これは絵が大きく取り上げられていないので残念。
《鳥と貝》…黒地の中に白を 草模様と塗れた蜘蛛の巣みたいな線効果で描くことで鳥を浮かび上がらせている。


 総じて言えば、色彩と線効果を自由に繰り広げている印象だ。写実と造形に関しては当書籍を眺める限りではさほど追求されている風に見えない。前者を活かすために削ぎ落とした結果かしらん?