”闌珊”と云う語がよく分からない

 無論 単語の意味=語義が分からないのではなく、字義の組み合わせと語義が全く一致しない風に思われるのだ。


 "珊"の字を用いた最も一般的な語彙である"珊瑚"は、一説によると古ペルシャ語の音訳であるとも言われる(sanga=石)。しかし『説文解字』(後漢)の時点で「珊=珊瑚」であったとも聞こえる。恐らく外来語の音訳なのだと思われる。サンゴについては音訳なのだろうと納得しておくとしても、しかしこれでは"珊"の字義が分からないままだ。


 "珊"には「身につけた玉などの鳴る音」の意味もある。"珊"の旁:冊が"刪"であると捉えてまた刪を削る音と捉えるなら、この「鳴る音」が原義であるのかとも思われるが、しかし「(珊瑚)飾りの音」であったかもしれず。
 『漢字源』によると、"珊"の字は会意兼形声である。冊=木の柵の形に生えるから とのことだが、この説明には今ひとつ納得出来ないか。『字通』によると、刪の形声であるとのことで、確かに上古音を調べると概ね"珊"と刪の音は近い。全く同一ではないかもしれないが、"珊"-冊よりは近似している風に思われる。つまり『字通』の説明の方が理に適っているのではないかと思われる。


 瑚の字は恐らく祭器を表す(論語の瑚蓀)。古代中国においては、玉もしくは近しい石材で製られた祭器は多々見られたのだから、祭器を指すと考えることはさほど不自然ではない。
 『漢字源』では、(1)赤色の宝石 (2)祭器の名前 とある。しかし、(1)は珊瑚=サンゴの語義が字義に浸透したものにも思われる。またちなみに、同典では、瑚蓀を「宝石で飾った祭器」(※原文侭ではない)と説明してある。

 "闌"は字義が幅広いけれど、大まかに分けるなら欄(手すり)/爛(ただれる)の二方向がある風に思われる。"闌"を「たけなわ」と訓(よ)み "盛り"の意味とするのは爛の方向だろう。原義についてはよく分からない。

 さて、本題の"阑珊"である。私的には闌"刪"(爛"刪")と書くほうが語義に適うと思うのだが、唐以降の用例では"阑珊"("闌珊")しか存在しないらしい。率直に言って、"珊"の字を用いる理屈が全く分からないのである。