石川啄木の作品より気に入ったものメモ


「さばかりのことに死ぬるや」
「さばかりの事に生くるや」
止せ止せ問答


●非凡なる人のごとくにふるまへる 後のさびしさは何かたぐへむ


●邦人の顔たへがたく卑しげに 目にうつる日なり家にこもらむ


●我時々見知らぬものに誘はれて曠野の中に捨てられて泣く


●無しと知るものに向かひておほごゑに祈りてありぬ故(かれ)涙おつ


●よきことの数々をもて誘へども胸を出でざり我のかなしみ


●曠野(あらの)より帰るごとくに帰りきぬ 東京の夜(よ)をひとりあゆみて


●気弱なる斥候のごとくおそれつつ 深夜の街を一人散歩す


●血に染めし歌をわが世のなごりにて さすらひここに野にさけぶ秋


●眼(め)閉づれど、心にうかぶ何もなし。さびしくも、また、眼をあけるかな。


●新しき明日の来(きた)るを信ずといふ 自分の言葉に嘘はなけれど――


●人がみな同じ方角に向いて行く それを横より見てゐる心


●何となく、自分を嘘のかたまりの如く思ひて、目をばつぶれる。