『中国語を母語とする日本語学習者の「語り」の 冒頭部と終結部における表現的特徴〜』

http://ci.nii.ac.jp/naid/110008658839
 日本語母語話者(JJ)と中国語を母語(CJ)とする日本語学習者に、日本語で文字の描かれていない絵本の説明をして貰い両者を比較してみたっと。
 CJには開始部・終結部の両方で物語の要訳/感想/評価を盛り込む傾向がみられた。これが日本語を学ぶ多国語話者全般に見られる傾向であるか、それとも中国語話者に強く表れるものであるかは確定されていない。また、それ以外にも開始部で(あるいは拙いものの)聞き手の意識を引く努力が見られる。少なくとも「外語学習者は情報伝達に対する不安から多弁になる」傾向はあるものと思われる。
 この"多国語学習者の多弁"で括れるものか分からないが、CJには作中で明言されない犬に名前を付ける事例がみられた。絵本の題名をそのまま付けるのは妥当な推論とも思えるが、『全く関係のない名称(ハチ公 等)が出てくる』心理は興味深い。
 JJの説明は、(1)"まず・最初"に等で物語の構造を明示する (2)感想や背景の類推はあまり挿入されない (3)5W1Hを一文で表現する (4)物語に沒入させる機微に富む くらいに要訳できるか。つまり情報の構造化に優れているし、だからこそ情報伝達への不安は見られない。